トップページ > 最新情報 > 新着情報 > 新型コロナウイルスのパンデミック中に乳がん検診受診率は低下した
新型コロナウイルスのパンデミック中に乳がん検診受診率は低下した
2025年1月16日
筑波大学(University of Tsukuba)
国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine)
概要
国民生活基礎調査のデータを二次的に解析した結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、日本でも乳がん検診の受診率が低下していたことを確認しました。また、45–49歳の女性や被用者保険の被扶養の女性など低下率が大きかった集団を同定しました。
ポイント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)中、多くの国で乳がん検診の受診率低下が報告されました。しかし、日本においては、乳がん検診受診率の全国的な変化は明らかになっていませんでした。
本研究では2019年と2022年の国民生活基礎調査(世帯票と健康票)のデータを二次的に解析し、パンデミック前とパンデミック中で乳がん検診受診率がどのように変化したかを調べました。さらに、受診率の低下が大きい集団を同定しました。
分析の結果、パンデミック前の受診率は48.3%(受診機会ごとでは、市区町村検診18.7%、職域検診17.0%、その他12.6%)、パンデミック中の受診率は47.1%(市区町村検診17.2%、職域検診17.5%、その他12.4%)でした。つまり、パンデミック中に全体の受診率は低下し、受診機会ごとの受診率では、市区町村検診が減少した一方、職域検診が増加しました。
受診率の大きく低下した集団は、年齢ごとに見ると45–49歳の女性、居住地域ごとに見ると町村に住む女性、教育歴ごとに見ると高校卒と専門学校・短大・高専卒の女性、健康保険ごとに見ると被用者保険の被扶養の女性でした。
政府は2023年3月に閣議決定した第4期がん対策推進基本計画で、がん検診受診率を60%以上にする目標を掲げています。乳がん検診でこの目標を達成するには、パンデミック中に低下した受診率を向上させるとともに、一般住民・がん検診に携わる人々の意識を高めていくことが改めて必要だと考えられます。
研究の背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、世界の多くの国で乳がん検診の受診率が低下したことが報告されました。しかし、日本において、全国的なパンデミック中の乳がん検診受診率の変化は明らかになっていませんでした。パンデミック中、人々は不要不急の外出を控えるよう呼びかけられていました。厚生労働省などが「がん検診は不要不急ではなく必要な外出です」としてがん検診の受診を勧奨し始めたのは2022年に入ってからでした。
経済協力開発機構(OECD)の健康統計では、日本の乳がん検診受診率の公式データとして、国民生活基礎調査が使用されています。国民生活基礎調査は日本国民の保健、医療、福祉、年金、所得など生活の基礎的事項を調査します。大規模調査(世帯調査、健康調査、所得・貯蓄調査、介護調査)は3年ごとに実施されています。その健康調査の質問項目に「あなたは過去2年間に、乳がん検診(マンモグラフィ撮影や乳房超音波(エコー)検査など)を受けましたか」があり、過去2年間に乳がん検診を受診した人の割合を聞いています。
本研究では、パンデミック前とパンデミック中における日本の乳がん検診受診率を全体と受診機会ごと(市区町村検診*1)、職域検診注*2)、その他)に算出し、受診率の変化が大きい集団を特定することを目的としました。
用語解説
*1)市区町村検診(がん):
自治体検診、対策型検診とも呼ばれる。健康増進法に基づき、住民の死亡率低下を目的といて市町村が実施しているがん検診。多くの市町村が検診費用の多くを公費負担しており、住民は一部の自己負担または自己負担なしで受診できる。
*2) 職域検診(がん):
職場において、被雇用者(被用者保険の本人)またはその家族(被用者保険の被扶養者)に提供されるがん検診。法的根拠はなく、一部の保険者や事業所が被雇用者またはその家族に、福利厚生の一環として任意に提供する。精度管理が、市区町村検診のように適切にコントロールされていないことが課題となっている。
- 詳細は以下のファイルをご覧ください。
リリース文書
問合せ先
研究に関するお問い合せ
岩上将夫(いわがみ まさお)
筑波大学 医学医療系/ヘルスサービス開発研究センター 教授
URL: https://hsrdc.md.tsukuba.ac.jp
田宮菜奈子(たみや ななこ)
筑波大学 医学医療系/ヘルスサービス開発研究センター 教授
URL: https://hsrdc.md.tsukuba.ac.jp
取材・報道に関するお問い合せ
筑波大学広報局
TEL: 029-853-2040
E-mail: kohositu@un.tsukuba.ac.jp
国立国際医療研究センター(NCGM)企画戦略局 広報企画室
Tel:03-3202-7181
E-mail:press(at)hosp.ncgm.go.jp
※(at)は「@」に置換してください。
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1