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炎症性腸疾患のヒト腸内細菌・ファージ・真菌の同定と世界共通性を発見
2024年11月29日
東京医科大学(Tokyo Medical University)
筑波大学(University of Tsukuba)
国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine)
概要
東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)消化器内視鏡学分野の永田尚義 准教授、河合隆 主任教授、筑波大学(学長:永田恭介/茨城県つくば市)医学医療系消化器内科の秋山慎太郎 講師(筑波大学附属病院IBDセンター副部長)、土屋輝一郎 教授(筑波大学附属病院IBDセンター部長)、および国立国際医療研究センター(理事長:國土典宏/東京都新宿区)消化器内科の小島康志 医長、大杉満 糖尿病情報センター長、植木浩二郎 糖尿病研究センター長、上村直実 国府台病院名誉院長らの研究グループは、潰瘍性大腸炎およびクローン病患者に特有の腸内細菌叢、機能代謝遺伝子叢、抗生剤耐性遺伝子叢、腸内ファージ叢、腸内真菌叢(これらを総称してマルチバイオームと呼ぶ)を同定しました。また、世界4カ国のショットガンメタゲノムデータを解析し、日本人IBD患者に特有のマルチバイオームの特徴が、世界のデータにも共通して確認できることを発見しました。この研究成果は「Nature Communications」オンライン版に掲載されました(現地時間2024年11月27日公開)。
研究のポイント
- 本研究では、Japanese 4D(Disease Drug Diet Daily life)コホートと呼ばれる大規模マイクロバイオームデータを用いて、UCとCDのマルチバイオームの全貌を解明しました。
- また、これら疾患に特徴的な細菌の機能代謝遺伝子叢や抗生剤耐性遺伝子叢を明らかにしました。
- さらに、海外4か国のIBDショットガンメタゲノムデータを解析し、我々が発見した日本人IBDマルチバイオームの特徴が、世界でも共通して認められることを明らかにしました。
- これら発見は、IBD病態解明の研究を加速させるだけでなく、腸内の微生物種をターゲットとした診断や治療法の開発が、国や地域に依存せず広く適用できる可能性を示唆しており、重要な基盤知見になると期待されます。
研究の背景
炎症性腸疾患(IBD)は、腸に慢性の炎症が生じる厚生労働省指定難病のひとつであり、潰瘍性大腸炎(UC)*1 とクローン病(CD)*2 に分類されます。若年層に発症することが多く、一生涯に渡り生活の質に影響を及ぼすだけでなく、患者数の増加による医療経済の圧迫も問題となっています。原因が不明なため完治は困難であり、手術による腸管切除を余儀なくされる患者が多数存在します。
ヒトの腸内には、細菌だけでなく、ウイルス(バクテリオファージ:以下ファージ)、真菌などの微生物も生息しており、これらを総称してマルチバイオームと呼びます。従来のIBD研究では、腸内細菌叢に着目した解析が中心的であり、IBD患者では、腸内細菌叢の乱れや特定の腸内細菌種の変化が確認されております。しかし、腸内細菌種以外の微生物やそれらが有する機能代謝遺伝子がどのように相互作用(クロストーク)し、IBDの病態形成に関与しているかは分かっておりません。これら微生物や遺伝子を網羅的に調べることで、IBDの新たな疾患メカニズムの解明、IBDの新たなバイオマーカーの同定、そして、微生物制御を介した治療法の開発につながる新知見が創出される可能性があります。
用語解説
*1 潰瘍性大腸炎(UC: ulcerative colitis)
炎症性腸疾患に分類される原因不明の慢性腸炎。食事や喫煙などの環境因子や遺伝的因子などの複数の要因が関連し、治癒が困難であり、難病に指定されている。近年、本邦では急激に患者数が増加し、22万人を超えると推定されている。
*2 クローン病(CD: Crohn’s disease)
炎症性腸疾患に分類される原因不明の慢性腸炎であり、UCとは対照的に大腸だけでなく小腸を含む全消化管に病変が出現する病態である。難病に指定されており、UCと同様に本邦では急激に患者数が増加しており、7万人を超えると推定されている。
- 詳細は以下のファイルをご覧ください。
リリース文書
問合せ先
研究に関するお問い合せ
東京医科大学 消化器内視鏡学分野
准教授 永田 尚義
TEL:03-3342-6111(病院代表)
報道に関するお問い合せ
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