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NTTP混入が確認されたシタグリプチンの使用と関連したがん発生リスクの可能性について、全国の大規模レセプトデータを用いた検討結果を公表

2024年9月2日
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

研究成果のポイント

国立研究開発法人 国立国際医療研究センターの研究者らは、最近その一部に発がん性があるといわれているニトロソアミンの一種、7-nitroso-3-(trifluoromethyl)-5,6,7,8-tetrahydro[1,2,4] triazolo-[4,3-a]pyrazine(NTTP)の混入が判明した2型糖尿病の内服薬(DPP-4阻害薬の一種)であるシタグリプチンの使用が、他のDPP-4阻害薬の使用と比べてがん発生リスク上昇と関連する可能性について、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)注1)を用いた疫学研究で検討しました。今回解析した中では、シタグリプチン使用に関連したがん発生リスク上昇のエビデンスを認めませんでした。一方で、がん発生リスクの正確な評価には、より長期の観察が必要と考えられます。

研究の背景

シタグリプチン(商品名:ジャヌビア®️、グラクティブ®️)注2)は、本邦で最も多く用いられる2型糖尿病内服薬の1クラスであるDPP-4阻害薬の一種です(1)。2022年8月、米国FDAより、シタグリプチンにその一部に発がん性があることが知られているニトロソアミン類の1種、NTTP注3)が微量混入していたことが報告されました(なおNTTP自体に発がん性があるかどうかは不明です)。米国FDAはNTTPの許容摂取量を見直し、安全性を確保するための措置を講じた上で、臨床上適切な場合には使用継続を推奨しました(2)。厚生労働省も自己判断で使用中止を避けるよう呼びかけました(シタグリプチンへのNTTP微量混入は、混入判明後、速やかに解消されました)(3)。 もともとの1日許容摂取量の閾値の設定がとても厳格であり、判明時点での知見からはシタグリプチン使用による健康被害は低いと推定されていました。しかし、実際のシタグリプチン使用とがん発生リスクとの関連の可能性について、検討されていませんでした。 よって、本研究では、全国の保険診療における電子レセプト情報の悉皆データである匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)の9年間のデータを用いて、シタグリプチンの使用が他のDPP-4阻害薬の使用と比べてがん発生リスク上昇と関連がある可能性について検討しました。

用語解説

  • 注1)匿名医療保険等関連情報データベース(NDB):
    「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、厚生労働省が医療費適正化計画の作成、実施及び評価のための調査や分析などに用いるデータベース。1)医療機関が医療保険者へ向けて発行するレセプト(診療報酬明細書)情報と、2)特定健診・特定保健指導情報の2つの要素を格納している。NDBは、省庁や自治体が医療費適正化計画の作成等のための調査及び分析、医療サービスの質の向上等を目指した正確な根拠に基づく施策の推進等の目的で利用する他、医療サービスの質の向上等を目指した正確な根拠に基づく施策推進に有益な分析・研究、学術研究の発展に資する目的で行う分析・研究を研究者等が行うことも認められており、審査を受けた上でデータの一部が研究者に提供される。大規模であるという特長がある一方、レセプトに含まれる傷病名、診療行為、医薬品などはデータに含まれているが、医療機関における検査結果は含まれておらず、解析内容に応じて、結果の解釈などに留意を行う必要がある。
  • 注2)DPP-4阻害薬、シタグリプチン:
    DPP-4阻害薬は2型糖尿病薬経口薬の中で本邦で最も多く使われているクラスの薬であり、体内でインスリン分泌を促す物質(GLP-1)を分解するDPP-4(dipeptidyl peptidase IV)を阻害し、血糖値を低下させる。シタグリプチン(商品名:ジャヌビア®️、グラクティブ®️)は、本邦において最も早く販売開始された(2009年12月)DPP-4阻害薬である。
  • 注3)ニトロソアミン類、NTTP:
    ニトロソアミン類はアミンと亜硝酸のニトロソ化反応で生じる化合物の総称であり、ニトロソアミン類の少なくとも一部の化合物では発がん性があることが分かっている。NTTPはニトロソアミン類の一種で、NTTPの正式名称は7-nitroso-3-(trifluoromethyl)-5,6,7,8-tetrahydro[1,2,4] triazolo-[4,3-a]pyrazineである。シタグリプチンリン酸塩水和物製剤の原料又は製造工程中の分解産物がニトロソ化することによりNTTPが生成されると考えられている。

問合せ先

研究に関するお問い合せ

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
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電話:03-3202-7181

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