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オミクロン株(BA.5系統)流行期のCOVID-19感染後の罹患後症状の頻度とリスク要因の検討

2024年7月1日
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

研究成果のポイント

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM) 国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター 磯博康センター長、射場在紗上級研究員らの研究グループは、東京都品川区、筑波大学、大阪大学と共同で、オミクロン株流行期の新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)による罹患後症状の頻度や関連要因を明らかにするために、東京都品川区在住の2022年7~8月(いわゆる第7波)にCOVID-19に罹患しHER-SYSに登録された20~69歳までの感染者8,392人の罹患後症状(※1)と、性別・年齢をマッチさせた非感染者6,318人を比較しました。その結果は以下の通りです。

  • 感染者における罹患後症状の頻度は11.8%と、非感染者での2か月以上続く同様の症状の頻度と比べて約2倍高いことがわかりました。
  • 味覚障害、筋力低下、嗅覚障害、脱毛、ブレインフォグ(※2)、集中力低下が感染者に特徴的な症状として見出されました。
  • 女性、基礎疾患のある人、COVID-19の重症度が高かった人では罹患後症状の頻度が高い一方、感染前にワクチンを接種した人では罹患後症状の頻度が低いことがわかりました。
  • 罹患後症状がある人においては、感染から約半年経過後も8.5%が日常生活に深刻な支障があると回答しました。

この結果から、オミクロン株流行期の軽症者を中心とする一般集団においても、COVID-19による罹患後症状が、より長引くことが示されました。

※1 罹患後症状:本研究では、療養期間中から2か月以上続く症状(ブレインフォグ、集中力低下、脱毛、筋力低下については感染から回答期間までの間で2か月以上続く症状)と定義しました

※2 ブレインフォグ:脳に霧がかかったように感じる症状のことで、「ぼんやりしている」、「混乱している」、「新しくものを覚えることが難しい」、「優柔不断」、「しっかり考えられない」などの状態です。

研究の背景

オミクロン株感染後の罹患後症状の頻度や関連要因については世界的に報告が少なく、特に一般住民の方を対象として非感染者との比較を行った調査は限られていました。

研究内容

  • 研究名:コロナ禍における区民の健康に関する調査(Health survey for general population during the COVID-19 pandemic)
  • 方 法:東京都品川区において2022年7~8月にCOVID-19に罹患しHER-SYSに登録された20~69歳の感染者25,911人と、性別・年齢をマッチさせた非感染者25,911人を対象にアンケート調査を実施しました。
  • 主要評価項目:COVID-19の罹患後症状
  • 主な副次評価項目:心身の健康状態、社会経済状況等
  • 有効回答者数:14,710人(感染者8,392人、非感染者6,318人)

結果

調査は2023年1~2月にwebアンケート方式で実施し、14,710人(感染者8,392人、平均年齢42.3歳;非感染者6,318人、平均年齢42.4歳;有効回答率28.4%)が回答しました。感染者は、初回感染から平均168日経過し、COVID-19の重症度は8,326人(99.2%)において軽症または無症状でした。また、感染者の91.9%はCOVID-19罹患前にワクチンを1回以上接種していました。
感染者における罹患後症状の頻度は11.8%と、非感染者における2か月以上続く症状の頻度5.5%よりも約2倍高い結果となりました(性・年齢調整オッズ比:2.3、95%信頼区間:2.05~2.64)。味覚障害、筋力低下、嗅覚障害、脱毛、ブレインフォグ、集中力低下が感染者に特徴的な症状として見出されました(非感染者に対する感染者の調整オッズ比5.9~27)。女性、基礎疾患のある人、COVID-19の重症度が高かった人では罹患後症状の頻度が高い一方、感染前にワクチンを接種した人では罹患後症状の頻度が低い結果でした。ただし、ワクチン接種によって罹患後症状の発症リスクが低減するかどうかについては、より詳細な研究が必要です。罹患後症状がある人においては、感染から約半年経過後も59.5%が日常生活へ何らかの支障があり、8.5%が深刻な支障があると回答しました。

研究助成

本研究は、厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業JPMH21HA2011の助成を受けたものです。

問合せ先

研究に関するお問い合せ

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター
研究員 射場 在紗
電話:03-6228-0562

報道に関するお問い合せ

国立国際医療研究センター(NCGM)企画戦略局 広報企画室
Tel:03-3202-7181
E-mail:press(at)hosp.ncgm.go.jp
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